上の写真は、壁一面に展示されていたターンXの設定画である。運よくこれは撮影OKであった。
前々から行こうと思いつつもずっと行かずにいる内に、もう展示終了日が近づいてしまっていた(これでも一度延長している)為、そろそろだと思って足を運ぶことにした。
展示場であるアーツ千代田3331は秋葉原駅から少し歩いた所にあった。それにしても、秋葉原を訪れたのは去年の9月以来だろうか。大してその時から開きがあったわけではないのに、ふと十数年前のこの場所が脳裏に浮かんでしまい、何とも切ない気持ちになってしまった。
さて展示場に入り、チケットを買う為に行列に並んだ。展示終了日が近い事もあるのだろう、入場までには結構待たされた。暫くして、入場前のアナウンスを聞く事になり、写真撮影OKの場所とそうでない場所がある事を説明された。その後程なくして会場に入ることが出来た。
怒涛のSFアートワーク
入ってすぐ、シド・ミードの仕事に圧倒されることになった。カーデザインなどSF系の画稿が沢山展示されており、それら一枚一枚に描かれている物が本当に緻密であった。幾何学的形状で構成されたデザインは、その画力とはまた別にリアリティを醸成していた。また、構成を取ってみても、ただデザインの対象物だけではなく、それをより映えさせるために周囲の背景もしっかり描き込まれていたのが印象的だった。
スーパーロボット系よりリアル系ロボが好きな自分にとっては、この様な何らかの目的性を感じさせるデザインの見本市は嫌でも心が引き込まれてしまう。これらは、今後自分が何らかのデザイン的な物を考える上で大きく糧にはなるだろうし、また彼自身の画力に対する憧れも、改めて刺激された。
そう思いながら様々な画稿を見ていたのだが、この後いきなりその心に楔を打たれる事になる。
ユートピアかディストピアか
自分のすぐ近くで、ある2人組が作品を見ながら何かを話していた。その中で「SFに対する凄い執念を感じるけれど、何か今となってはバタ臭さが前面に出ちゃってるなあ」と自分の心に引っかかる一節があって、そこから暫く考え込んでしまった。
そう、最早今は、SF的な物に強く心を惹かれるような時代ではなくなってしまったのだ。アニメだって、もうロボット物は主流ではない。テクノロジーの発達が必ずしもユートピアに近づくための側面だけを提供してくれる訳ではない事は、既に今の我々の内面に刻み込まれているのだ。ロボットとは関係ないが、例えばSNSだって、結局は国による監視以前に市民同士で監視し合う状況を創出してしまったのだ。
ふと我に返ろうとし、作品を見る。その中には様々な人間も描かれている。彼らはその世界、その場所で何を思いながら生きているのだろうか?当然こんな事は描いたミード氏本人しか分からないのだろうが、すうっと自分の心の潮が引いていく感覚は認知できた。作品を観るペースが少しだけ早くなった。
それでも神なものは神
展示終盤に、∀ガンダム関連の仕事がまとめられていた。相も変わらずターンXのデザインは格好いいし、ガンダムやその他バンディット等のそれも素晴らしいものであった。ここに辿り着くまでにメンタは結構揺れたけれども、やはりミード氏のデザインセンスには敬意しか払えないのである。
改めて、この展示会に足を運ぶことが出来た事を嬉しく思った。
展示に関する物販は既に終了していたのだが、もしこの時仮にデザイン画稿をまとめた書籍が残っていたならば、手に取っていただろう。
