どうやら自分は半年毎に新しく万年筆を購入してしまう傾向がある様だ(その様な制約は特に課してはいないのだが)。88ジョーヴェを買ってから、もう暫く万年筆は買わなくても良いだろうと思っていた矢先に、88ヴェネレのこの一風変わったアウロロイドの軸を見てしまい、結局買いたい気持ちを抑える事が出来なくなり、斯様に購入した次第である。
ピンクベージュの軸
箱を開けて初めてその実物を見た時の軸色の印象は、かなり想定に近い物だった。ネットで写真を見た時では、何となく淡いピンクをベースにした色なのだと承知していたが、いざ実物を見た上でもう少し正確な印象を言うと、そのピンクとベージュの中間という様な色に感じられた。フェミニンな雰囲気を醸し出す一方で、このアウロロイドの模様からして何となく岩塩を削り出したかの様にも見えた。とはいえこの軸の綺麗さは毎度期待を裏切らない。例によって腹が立つ程綺麗なのである。
期待を裏切らないのは書き味のサリサリ感だって同様である。正直ヌラヌラ書けるタイプの万年筆を暫く買っていない身としては特に目新しさは無いのだが、まあそれは特に気にしてはいない。
インクを2瓶買ってしまった
さて今回この88ヴェネレを購入及び使用するにあたり特に難儀したのがこのインク選びであった。基本的に軸色に沿った色のインクを使う様にしていて、今回もそれに可能な限り則ろうとしていた。しかし写真で見た限りでは丁度良いピンクの加減が良く分からなかった。RGBでいう所のB成分はかなり低い様に思われたので、当初その方向でインクを探していたのだが、丁度良さそうなのが中々見つからない。暫く悩んだ末、ややくすみの利いたマゼンタ寄りのピンクの物を買う事にした。具体的に言えばキングダムノートのサクラタケである。
そしていざヴェネレが届いて、始めはそれを吸わせて使っていた。くすみが程よくピンクの自己主張を抑えていたのは良かった一方で、もっと軸色に沿ったインクを試してみたいという思いが日増しに強くなっていった。というのは、既に述べた通りヴェネレの軸色がピンクベージュであり、B成分が抑えられている印象であったからだ。
ではこのピンクベージュ色のインクが都合よく作られてはいないものだろうかと改めて調べてみたら、いきなり見つかってしまった。それで現在ヴェネレに吸わせているのがTACCIAのリップカラーインクシリーズのピンクベージュである。正直この時に至るまでTACCIAというメーカーは知らなかった上、パッケージのこの如何にもフェミニンな仕様に少々怖気づいたのだが買わずにはいられなかった。このインクで書いてみた時の色味としては、文字通りのピンクベージュよりはやや色が濃く、色相としては少しオレンジに寄った印象である。
マゼンタ寄りのサクラタケと、オレンジ寄りのピンクベージュ。それぞれ色相が異なっている為、このヴェネレの軸に今後どちらを吸わせるかは、その時の気分によって決まってくるだろう。ちなみに筆跡の方は、いずれも書いてる途中は薄めに見えるが乾くとある程度視認性が上がる様だ。とはいえ購入してからまだ日が浅いのでじっくり慣らしていきたい。
最後に
改めて振り返るが、今回ヴェネレを購入したのは、それまで自分が持っていた万年筆とは明らかに雰囲気が異なっていたからだ。万年筆その物のデザインと、自分が普段触れてこなかった様な色がピッタリと噛み合っていたその風貌に、とても見入ってしまったのである。
そういう訳で、今年はジョーヴェと合わせて2本の万年筆を買ってしまった事になる。いつの間にか、写真の通りアウロラ製の物だけでも既に4本になってしまった!
確かにアウロラの万年筆は、最近出た物の中では他にはカレイドスコーピオ等、絶えず物欲に揺さぶりをかけてくる物が多い。しかし、今はこれ位で良いだろう・・・。

